奇跡
死を目前にして人生や幸せの意義を問う
言葉の魔術師、ノ・ヒギョン作家が書き下ろした4部作の特集ドラマ『奇跡』
肺ガンにかかり、人生を振り返る最後の機会を迎えた50代半ばの男にスポットライトを当て、感動や面白さという次元を越えて、一人の人物の過去、現在、未来を深く照らしながら、人生とは何か、家族とは何か、愛とは何か、誰もが夢見る『奇跡』とは本当に起こりうるものなのかを暖かい視線で描いたドラマである。
::作家ノ・ヒギョンの思い::
人間には生まれてから死ぬまでの間に、自分の人生を振り返りやり直せる時が3回訪れるという。1回目は青春真っ盛りの思春期、2回目はもっとも愛する人を失った時、あるいは身を粉にして尽くした仕事から離れる時、そして3回目は死に直面した時なのだそうだ。『奇跡』は、3回目の人生を振り返る、最後の機会を迎えたチャン・ヨンチョルの物語である。50代半ばのヨンチョルは、その年齢になれば誰もが感じるはずの老後の不安、定年を迎える侘びしさ、健康の不安などは他人事のように思ってきた人物だ。出世街道をまっしぐらに生きてきて、思い通りに系列会社の社長の椅子まで用意されて、何もかもうまくいくと思っていた。ところがある日突然、末期ガンの宣告を受ける。ヨンチョルは青天の霹靂のような出来事をなかなか受け入れられない。これまでひたすら走り続けてきた足を初めて止めて自分の人生を振り返ってみると、がむしゃらに生きてきた、と堂々と言えるはずの自分の過去が、整理しがたいほどハチャメチャなものだったことに気づく。そこには家族にすら理解してもらえない、卑怯で、俗物的で、二重人格の自分がいた。そんなヨンチョルが死へと向かう過程を通して、人生をどう生きるべきか、家族とは何か、愛とは、友情とは、死とは何か、そして人々が願う奇跡とは本当に起こりうるものなのかを暖かいタッチで描く。この類のドラマ特有のじれったさをなくすために、幻想的なシーンを加え、真面目でありながらも重くならないように表現してみたい。このドラマが、普段の生活の中で人生を振り返るきっかけとなり、日々の暮らしが与えてくれる無限の幸せを感じてほしいという願いを込めて執筆した。
出演 : チャン・ヨン、パク・ウォンスクほか
提供元 : MBC
話数 : 全4話
韓国放送日 : 2006年12月09日
KNTV初放送 : 2007年04月20日
登場人物
チャン・ヨンチョル(55歳、男) チャン・ヨン
放送局の編成局長。系列会社の社長の席が用意されている人生の勝ち組。一流大学を卒業して難関と言われる放送局のテストに楽々合格、報道局でプロデューサーとして実績を積み上げ、部長、局長を歴任し、放送局トップの編成局長にまで上りつめた。順風満帆の人生を歩んできたヨンチョルだが、仕事はできても性格はずる賢く、自分勝手であるうえ短気、周りから卑怯だと言われてもまったく気にしない鉄面皮の一面も。他人の目には出世街道まっしぐらに映っているが、心の底では満足していない。
オ・ミソ(55歳、女) パク・ウォンスク
ヨンチョルの妻、大学卒業後、雑誌社で記者をしていた時にヨンチョルと出会う。平凡で誠実な公務員家庭の末っ子で、明るく育ったミソには、最初ヨンチョルが近寄りがたい存在だった。貧しい苦学生で哀れにも見えるし、カッコよくも映った。何度かデートを繰り返すうち自然にプロポーズされ結婚。誠実な夫に、子供に恵まれ、平凡に生きる主婦。
チャン・ジニョン(32歳、男) チョン・ギソン
ヨンチョルの長男で整形外科医。息子の海外留学のために妻と子供は外国暮らし。家族や周囲の人に対して優しく、航空大に行き機長になりたいと言った時、反対した父親と一度大きく争った時以外は、親に逆らうこともなく従順に生きてきた優等生。
チャン・ジャンミ(29歳、女) サガン
チャン・ヨンチョルの長女。旅行専門作家。世界の奥地という奥地を歩き回って紹介し、自然と文化、人を紹介する作家である。最近、自分の体の異変に気づいた。数ヶ月前、以前インドで知り合った英国人男性とアフガンに滞在、思い当たる節があり不安を抱えている。
チャン・ジンミン(26歳、男) ユ・ジョンソク
ヨンチョルの親友。幼なじみであり、高校の同級生。放送局ドラマ局の局長。ユーモアがあり正直で、たまに浮気もするし、情もあり、密かに悪さもする典型的な小市民タイプ。
キム・スッキ(53歳、女) ナ・ヨンヒ
ヨンチョルの昔の恋人。小さなアイスクリーム店を経営している。30代半ばで交通事故で夫を亡くした後、女手ひとつで娘を育てて結婚させ、最近孫が生まれた。40代半ばに乳ガンにかかり、つらい闘病生活を経験した後、ようやく完治したとおもいきや、検査でガンが転移していたことを知る。放射線治療を勧められ考えていたところで偶然ヨンチョルと出会う。