野人時代
人物キム・ドゥハンを描く大河ドラマ
試練と激動の歴史を歩んだ人物
キム・ドゥハン大河ドラマ「野人時代」
韓国の近代史においてキム・ドゥハンという名前は、あまりにも有名だ。ある者は彼を侠客と言い、また他の者はヤクザと言う。しかし彼はまぎれもなく、韓国の歴史が生んだ悲運の人物であり犠牲者である。ドラマ「野人時代」は、キム・ドゥハンの神話だけを描いた内容ではない。彼の人生は、常に当時の矛盾がもっとも対立した状況に置かれていた。独立軍の総司令官であるキム・ジャジンの息子として日帝時代を生き、左翼と右翼が対立、独裁対民主の熾烈な政治闘争の中にいた。このドラマはキム・ドゥハンという一人の人物に深層的に接近することによって、息づくキム・ドゥハンを描き出し、彼の生きた時代の真実をもう一つの角度から現すだろう。
二人の俳優が見せてくれる「カリスマ」
新たなカリスマが「野人時代」を彩る。シラソニ役のチョ・サングとイ・ジョンジェ役のキム・ヨンホ。従来のイメージとは違った強い印象を与えている彼らは、各々のキャラクターになりきって劇中の存在感を高め、お茶の間の関心を集めている。
■チョ・サング(シラソニ役)
彼自身が語るように、以前の彼は、俳優チョ・サングというより、自身が演じたキャラクターの名前で覚えられるような役者であった。そんな彼にとってシラソニは大きな転機を与えてくれた。「従来、私は見せるべきものを早く見せ、インパクトを残してさっさと退場するパターンが多かったんです。今、やっているシラソニは喧嘩する時を除けば、どちらかというとコミカルで庶民的な感じで、監督もそっちの方をもっと生かそうと言っています。私も今までのイメージを払拭して、平凡で庶民的な演技をしたかったんですよ」。こうして試みられた彼の変身は、俳優チョ・サングを取り戻すきっかけになったようだ。
今では道を歩くのも大変なようだ。生まれて初めて経験する「有名人」に戸惑っている様子。「子供から年配の方まで関心を示していただけるのは初めてです。私自身は常に至らないと思っているので恐れ多くて。ともあれ、人気ドラマの影響力を改めて感じている次第です」。
以前は演技が一番重要だと思っていた人が、今は家族が一番大切だという。「たとえ物乞いになろうとも家族のためには演技をも捨てられる」という彼の言葉は、演技への情熱が失せたというより、彼の内面世界がより深くなった表れと感じ取れる。
■キム・ヨンホ(イ・ジョンジェ役)
世間はイ・ジョンジェという人物を否定的にだけ記憶している。その根っこに独裁政権の手先として動いた政治ゴロというイメージがあるからだ。歴史上の功過は、当然、はっきり分けなければならないが、俳優キム・ヨンホの内面には世間の評価とはまた別のイ・ジョンジェが存在する。
「私の中では私だけのイ・ジョンジェになるのです。一人間としてのイ・ジョンジェです。悪い面もあったけれど、それでも一世を風靡した侠客になった人物ですから、それなりの資質を兼ね備えていたはずです。私は彼の魅力の方を浮き彫りにしたいと思っています」。おそらく映画に集中すると言ってドラマ出演を見合わせていた彼に、出演を決心させた理由はここにあるのだろう。悪者としてのみ評価される一人の人間の歴史にも、何か違った一面があるはずだとの思い、そして、それを引き出してみたいという俳優の欲望、まさにそれである。
キム・ヨンホは理想の俳優の条件として「人を理解できること」を挙げる。彼は人間を特定の物差しで見ないように努力し、人の生きざまを真摯に、客観的に省察し、人間を十分に理解しながら包容できる視線を通じて、あるがままの姿を追求するという。イ・ジョンジェのカリスマ的なボス像が期待できるだろう。
二人が織り成す波乱万丈の物語
知られているようにシラソニはイ・ジョンジェの東大門一派に袋叩きにあう。しかし、後に、5.16クーデター後の軍事法廷で、彼はイ・ジョンジェの罪を公にしなかった。そしてシラソニは激烈な一時代の伝説に残り、イ・ジョンジェは刑場の露となり消えていく。
『野人時代』のチョ・サングとキム・ヨンホという二人の俳優の熱演を通して、彼らの波乱万丈の物語を目の当たりにするだろう。二人の活躍はドラマの後半で大きな見どころとなるはずである。
出演 : アン・ジェモ、キム・ヨンチョルほか
提供元 : SBS
話数 : 全124話
韓国放送日 : 2002年07月29日
KNTV初放送 : 2008年05月15日