海に生きる多くの魚のなかで、サメだけは浮き袋を持たない。 浮き袋がないと、魚は沈んでしまうので、片時も動きを止められない。 それ故に、サメは誕生してから休まず泳ぎ続けなければならず、 その結果、数年後には海の生物のなかの最強者となる。
―張世安「平常心」より―


強者になったサメは果たして幸福だったろうか。 深い海の無敵の強者になったが、眠らずに一生動き続けなければならないサメは 眠ることもできない孤独な海の王者に過ぎない、 厳しい宿命を背負って生きる孤独な存在ではなかっただろうか。

このドラマは家族の復讐を果たすため、地獄で無敵の強者になって甦り、恋人にさえ刃を突きつける、冷酷な審判者のハン・イスの悲劇的な運命と一途な愛に関する物語だ。そして、家族の醜悪な真実を暴かねばならないオイディプスのような運命を背負いながら、2人の男を同時に愛するしかないチョ・へウを通して、愛と情熱、真実と嘘、背信と信義に関して、人間としての悲しみを描き出すドラマだ。さらに、愛する妻の背信に憤怒し、絶望しながらも愛を貫こうと苦悶し、恋敵のハン・イスに対する言葉では表現できない共感を抱きつつも、憐憫と悲しみに苛まれながら彼の復讐を阻止しようとする、オ・ジュニョンの純愛物語だ。 運命の渦に巻き込まれ、激動の人生を歩まざるを得ない3人が、善と悪の狭間に立って、自分が信じる、あるいは信じたい真実に向かって戦いを挑む。だが、彼らが真実と呼ぶものが果たして本当の真実なのか、真実のように見えるだけなのか、彼らも混沌のなかで翻弄されながら葛藤し、苦しい選択を余儀なくされるだろう。
ビジュアルから演技力まで圧倒的な、キム・ナムギル&ソン・イェジンのメロ
両俳優の名前を聞いただけで期待が高まる。キム・ナムギルは、『悪い男』以来3年ぶりに、ソン・イェジンもやはり『個人の趣向』以来3年ぶりのドラマ出演だけあって、2人の共演はファンたちを充分に楽しませてくれるだろう。先の制作発表会で、パク・チャンホン監督が両俳優のキャスティングの理由を、「ビジュアルに演技力まで兼備した彼らの魅力に負うところが大きい。公開されたハイライト映像と予告映像、現場のスチール写真を見ても分かるが、眼差しや微かな表情の変化だけで、複合的な内面感情を表現してみせてくれる」と語った。キム・ナムギルの除隊後の復帰作という点からも、また「メロのクイーン」ソン・イェジンの久々のテレビ復帰作という点からも、彼らの活躍に期待が集まる。
『復活』と『魔王』に続く復讐三部作の完結編
今までも多くの視聴者に名作ドラマとして記憶される『復活』と『魔王』。キム・ジス作家とパク・チャンホン監督の復讐シリーズとして、完成度の高いストーリーと映像が大衆から愛され続けている。今回の『サメ』はシリーズの三作目で、多くの視聴者が放送を待ち望んでいる。『復活』では復讐劇の始まりを知らせ、復讐が必ずしも痛快なものではないということを、『魔王』では復讐する者のストーリー以外にも、復讐される側の傷痕にも均等に視線を当てて描いた。この度の制作発表会で監督は、「今回は『復活』のストーリーに被害者の立場を加えて描くつもりでいる。」と明かした。メロにも比重を置いて、哀切感をにじませながらも、キャラクター間の繊細な心理的駆け引きと、パズルを解くように事件の真相をたどりながら、歯ごたえのある緊張感を醸し出していくものと見られる。